長引く“コロナ禍”に、 スポーツ界もさまざまな影響を受けているなか、京都のジュニアアスリートたちは決して挑戦を諦めず、絶え間なく努力し、自分達の力を信じている。その活躍ぶりを紹介しよう。
笑顔とともに伸びた記録
2022年全国インターハイの女子短距離3種目に出場し、400m、200mの「2冠」に輝いた。
3年生の児島は、2年前のインターハイが新型コロナウイルス感染拡大で中止、2年生だった昨年インターハイは400mに出場したが、予選で敗退した。それから1年、陸上部の練習も途切れることが多かったが、自発的に練習する気持ちを失わなかった。
1種目目の400mは8月3日。「(大会開催を)多くの方々が準備をしてくれた。結果を出そう、楽しく走ろう」と、心に決めた。予選、準決勝は、暑さによる体力消耗を極力抑え、いずれもトップでゴール。決勝は、前半からリードし、後半ピッチを上げて54秒04の自己ベスト、京都高校記録で優勝した。しかし、4日の100mは準決勝で敗退。翌日は休養日になり「海に行って、気分をリフレッシュできました」と児島。
6日の200mは「400m優勝の自信と、100mの悔しさの両方を持って走りました」。スタートは出遅れ気味だったが、直線に入ると一気に加速。24秒32で、「2冠」達成だ。2位に1秒以上の大差をつけての完勝だった。

この優勝の伏線は春先にあった。春季大会で800mに挑戦すると、2分12秒49で優勝し、体力が上がってきていることが記録として現れた。同時に周囲も「児島の走りが一段と大きくなった」と、見ていた。インターハイ2冠に、児島は「1年前には想像もできなかった」と、喜びをかみしめる。たどってみれば、西京高校への進学を決めたときから始まった話だ。西京陸上部の女子は、京都インターハイの総合成績で8連覇(代替大会含む)の強豪であり、同時に有数の進学校。中学生だった児島は「陸上を思いきりしたいし、勉強も頑張りたい」と、視線を曲げなかった。
ベテランの渡邉為彦監督は、陸上の技術と同時に、心の教育に重きを置き、人間としての成長の道筋を示す。「自分で(課題に)気付ける、周囲(の状況)が見える人間に……と教えていただいている」と児島は話す。3年生になって気づいたことが「私、中学生のときより笑顔が増えました」。笑顔の量と記録の伸びが正比例した、と言いたげだ。
今年6月の近畿インターハイでは、児島は100m、200m、400mの「3冠」を手にした。短距離個人「3冠」は38年ぶりだ。 進学希望の児島に渡邉監督は、「いずれ、日の丸(日本代表選手)をつける選手に成長してほしい。そのレベルにある」と話す。児島にとっての100mは「パワーと速さ、上への動きと前への動き、その矛盾の先にあるもの」。200mは「コーナーを抜けて、直線の先にゴールが見えるワクワク」、400mは「思いの強い者が勝つ種目」と教えてくれた。
井上 年央(いのうえ としお)
スポーツライター
元京都新聞社運動部長